2026年2月8日に、東京都・浜松町の東京都立産業貿易センター浜松町館にて開催された「東京ゲームダンジョン11」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。


歪な迷宮で赤ん坊を守り抜く、孤独な脱出劇
『Lull: Rest After Crying』は、増改築を繰り返して歪みきった施設から赤ん坊を背負った少女が脱出を目指す、2.5Dのホラーアクション・アドベンチャーだ。日本のゲーム開発スタジオ"Tonkobitta"が手掛ける。
実は筆者は以前にも試遊していて、2024年10月の「東京ゲームダンジョン6」に初出展された際はまだプロトタイプ版だったが、開発は着実に進んでいる。今回展示された最新ビルドではビジュアル面がさらに進化し、製品版に向けて数々のステージが作り込まれていく予感と、確かな手応えが感じられる内容となっていた。


霧と光が描き出す、和洋折衷の不気味な美しさ
今回の体験版で真っ先に目を引いたのは、以前よりもいっそう緻密さを増したビジュアルだ。5~10分ほどの試遊では、和洋折衷の古めかしい建物のなかで歩みを進め、その不穏な空気感を十分に感じ取ることができた。一見して普通の構造ではないと直感させる歪な空間の先で、何らかの儀式を執り行っているかのような広間に辿り着いたところで、今回の試遊は終了となる。
こうした空気感を作り出しているのは、ライティングとフォグの調整だ。ライティングは光の当たり方で影を際立たせる手法であり、フォグは画面全体に霧のようなモヤを加えて奥行きを出す技術のことだ。以前のバージョンで見られた「くっきりしすぎていた質感」が抑えられ、不気味さと美しさが混ざり合った、没入感の高い世界観が構築されていた。

また、音による演出も見逃せない。静寂のなかで響く物音や、環境音の変化が視覚的な情報と合わさることで、プレイヤーの不安感を巧みに煽ってくる。今回の体験版は、こうした「空気感」を短時間で凝縮して味わえるよう、展示用に調整したシーンを抜き出したものとのことだ。
基本は画面左から右へと歩みを進めていくが、崩れかけた宙づりの部屋から隣の足場に飛び移るといった、動きのあるシーンも盛り込まれている。時にはカメラを大きく引いて空間の巨大さを強調したり、画面手前に向かって進まされたりと、さまざまな構図の工夫が感じられる。製品版では、寄り道することで物語を補完できる要素も検討しているとのことで、この探索がどのような深みを与えてくれるのか楽しみだ。
開発者インタビュー:西口氏が語る「手触り」へのこだわり
ブースでは、開発者の西口雅幸氏にお話を伺うことができた。本作は『LIMBO』や『INSIDE』、そして『LITTLE NIGHTMARES -リトルナイトメア-』といった作品にインスパイアされており、パズル要素とリッチなグラフィックの融合を設計のベースとしている。
西口氏が何よりも大切にしているのは、操作における「手触り」だ。インスパイアされた『LITTLE NIGHTMARES -リトルナイトメア-』シリーズの1作目と2作目にあったストレスのない操作感が、開発チームの変更された3作目では変わってしまっており、ある種の違和感として手に残ったという。

それは感覚的なもので言語化が難しいが、本作においても「没入感を削がない操作感」として再現することに力を注いでいる。こういった感覚には覚えがあるという方もいらっしゃるのではないだろうか。
また、本作はノンバーバル(セリフや文字を使わず、動きや環境描写だけで物語を伝える)な手法で制作されており、映像と演出のみで物語を提示することで、プレイヤーに考察してほしいという意図もあるとのことだ。物語や登場人物の詳細なバックグラウンドも用意されているが、それらをあえて隠すことで、世界観に奥行きを与えようとしている。
2026年の完成を目指す着実な歩み
現在、本作の開発進捗は5割程度。開発を進めるうえでの現実的な着地点を模索した結果、当初予定していたエピソード形式から、内容を一本の濃密な作品に凝縮する形へと開発方針を転換したのだそうだ。これはプロジェクトの長期化を避け、確実に製品としてユーザーに届けるための選択と言えるだろう。
システムは概ね完成しているが、今後はステージの構築や演出といった、中身の作り込みが中心となる。特に大きな課題となっているのが、クライマックスにおける「ボス戦」の仕様だ。本作には直接的な戦闘が存在しないため、どのような形で山場を作るのか。戦闘型にするのか、あるいはギミック攻略や逃走型にするのかといった、その着地点を慎重に検討している段階だという。この選択ひとつで、プレイ後の読後感が大きく左右されることになる。

その雰囲気や空気感を通じて、着実にプレイヤーを物語へと引き込んでいく本作。西口氏が磨き上げる「手触り」が、完成版でどのような体験を綴ることになるのか、その完成を楽しみに待ちたい。
『Lull: Rest After Crying』は、PC(Steam)にて2026年のリリースを目標に鋭意開発中だ。
| 基本情報 | Lull: Rest After Crying |
|---|---|
| 開発 | Tonkobitta |
| 販売 | Tonkobitta |
| 配信日 | 2026年予定 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:朝比奈 編集:LayerQ












