手にしたのはスレッジハンマー。故郷を破壊し、記憶の亡霊と対峙するナラティブアクション『Virtue and a Sledgehammer』ブースレポート【BitSummit PUNCH】

朝比奈 / Asahina

2026年7月11日

2026年5月22日~24日に、京都府・京都市勧業館 みやこめっせにて開催された「BitSummit PUNCH(以下、BitSummit)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。

なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。

BitSummit | 毎年京都で開催している日本最大級のインディーゲームの祭典 です / Japan’s Industry-Leading Independent Game Development Festival in Kyoto
毎年京都で開催している日本最大級のインディーゲームの祭典 です / Japan’s Industry-Leading Independent Game Development Festival in Kyoto

立ちはだかる障害を叩き壊し、自らの過去へ挑む

Virtue and a Sledgehammer』は、デジタル化された隣人たちが彷徨う変わり果てた故郷を舞台に、スレッジハンマーで構造物を叩き壊しながら進むナラティブなアクションアドベンチャーゲームだ。スペインのインディーゲーム開発スタジオ"Deconstructeam"と"Selkie Harbour"がタッグを組んで手掛ける。なお、体験版の日本語翻訳は英日ゲーム翻訳者の伊東龍氏が担当している。

物語の舞台は、かつて人間が暮らした面影を残しながらも、今は無人となったスペインの山中にある町だ。家族や伝統、そしてコミュニティに馴染めなかった疎外感を抱える主人公の女性「プラテル」が、自らの手で道を切り開いていくために、ひと振りのスレッジハンマーを手に自らの過去へと挑む。

Steam:Virtue and a Sledgehammer
故郷へ戻り、スレッジハンマーで全てを叩き壊せ。『Virtue and a Sledgehammer』は、ナラティブ重視の探索ゲームだ。生まれ育った場所に、もはや自分の居場所はない——その疎外感を描く衝撃的な物語の中で、自らの過去に対峙しよう。

スレッジハンマーで道を切り開く、三人称視点の探索

本作のゲームシステムは、3Dの三人称視点で描かれるアクションアドベンチャー。プレイヤーは主人公のプラテルを操り、自由なカメラワークのもとで、やや早歩き程度の速度で移動しながら、タイトルにも冠したスレッジハンマーを振るっていく。体験版の範囲ではダッシュや回避といったアクションは見当たらず、基本操作は極めてシンプルにまとめられている。

スレッジハンマーによる行動は、近づいてきた相手をプッシュして押し返すアクションと、力を溜めて思い切り振り下ろす攻撃の2パターンのみだ。特徴的なのは、力を溜めた一撃によって、建物などのオブジェクトまでも破壊できる点だ。あらかじめ用意された明確なルートを進むのではなく、行く手を阻む構造物を文字通り粉砕して探索を進めていく。

山中の町には人間の姿がない。代わりに二足歩行の人型ロボットたちが、まるで人間であるかのように生活を営んでいる。プレイヤーは彼らと遭遇し、時には襲撃を退けながら、町を探索していくことになる。

道中にはホログラムのようなオブジェクトが浮かんでいることがあり、これに攻撃を加えたり、あるいは特定のポイントに到達したりすることで、過去の出来事がフラッシュバック。断片的な記憶をたどるようにして、ストーリーが進行していく――というのが基本の流れだ。

正気か、それとも狂気か。一振りのハンマーが暴く家族の闇

体験版の幕開けは、あまりにも衝撃的だ。2体のロボットを轢き、木に激突して停止した乗用車。車から降り立ったプラテルがトランクを開けると、そこには母親メルチェの死体と、ひと振りのスレッジハンマーが収められている。

そこから不意にシーンは切り替わり、プラテルの傍らに姉ニーナと母メルチェの姿が現れる。たとえ愛する家族であったとしても、許されざる行為に手を染めているならば、どんな手段を使ってでも止める――。そんなプラテルの選択を前に「愛する家族に手を出すはずがない」と語る母の姿が映し出される。

回想から現実に戻ったプラテルがたどりつくのは、山中に築かれた町。そこに暮らすロボットたちに向かって、彼女はおもむろにスレッジハンマーを叩きつけていく。

だが、本当に彼らはただのロボットなのだろうか。遭遇したロボットは、プラテルの名を呼び、問いかけてくる。人間のような言葉を紡ぎ、逃げ惑い、仲間の盾となって立ち向かってくるロボットたち。ゲームを一時停止した際、ポーズ画面に映し出される「落ち着け。こいつらは人間じゃない。私が知る者はみんな死んだ。」というフレーズが印象的だが、プラテルが見つめている風景は、本当に現実の光景なのだろうか。

探索を進めていくなかで発見するホログラムに攻撃を加えることで、過去の記憶がフラッシュバックしていく。あるシーンでは、本編よりも過去と思しき10代の頃の姉ニーナとの何気ない会話が映し出される。彼女の言葉の端々からは、社会に馴染むことができず、周囲が深く考えずに受け入れていることに疑問を抱き、自分だけが本質を理解している存在だと錯覚している姿が垣間見える。

「デジタル化の美点のひとつは、物質世界へのあらゆる執着を捨て去ること。」と、記憶のなかでニーナが残したその言葉は、人間たちが物質的な肉体から解き放たれ、ネットワークに記憶と意識を移し、ロボットの姿へ生まれ変わったことを指しているかのようだ。

どうも姉がこの事態を引き起こしているように思えるが、プラテルがすべてを激しく打ち壊していく行為は、一体何を象徴しているのだろうか。表面的には、どちらに狂気があるのかはわからず、その全貌をうかがい知ることはできない。

今回のBitSummitでは「Day of the Devs」ブースに出展されていたものの、時間帯によってプレイ可能なタイトルが切り替わっていたため、来場してもタイミングが合わずに試遊できなかったという方もいらっしゃると思うが――現在Steamでは体験版が公開中だ。

開発チームのfingerspit氏から、BitSummitで出展されたビルドよりもボリュームを増した内容になっていると伺っており、本稿の執筆にあたってあらためてプレイしたところ、実際に倍以上のボリュームとなっていて、より深くナラティブなシーンを体験することができた。

会場で試遊できなかった方も、一度触れて見た方もいま一度本作に触れてみてはいかだろうか。『Virtue and a Sledgehammer』は、PC(Steam)にて2026年に配信予定だ。


基本情報 Virtue and a Sledgehammer
開発 Deconstructeam, Selkie Harbour
販売 Devolver Digital
配信日 2026年
言語 日本語有り
価格 未定(Steam

ライター:朝比奈 編集:LayerQ

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