『ニエンタム — オプス・ゼロ — (Nientum - Op.ZERO)』は、ランベースのプラットフォームアクションとリズムゲームが融合した、ダークファンタジーなリズムADVだ。忘れ去られた劇場で、記憶を失ったふたりの少女がさまざまな舞台を上演していく、キャラクター描写とストーリーが魅力的な作品である。開発・パブリッシングともに、韓国のインディーゲームスタジオQueseraGamesが手がけている。
早期アクセスでは、act.0~5まで6公演ぶんのストーリーが配信されていた本作。2026年10月14日に正式リリースされ、ついに物語が完結を迎えたかたちだ。あわせてAndroid版もリリースされており、iOS版も後日配信予定とのこと。
発売から一週間で、Steamレビューでは“圧倒的好評”ステータスを獲得した本作。弊誌では早期アクセス時にも紹介しているが、ネタバレを避けつつゲームの特徴や魅力を改めて紹介するとともに、開発者へ実施したメールインタビューの内容もお伝えしていきたい。

“舞台”を通じて描き出される、ふたりの少女の物語
本作では、舞台監督を務める「アレフ(CV:安済知佳)」と役者の「リオラ(CV:高田憂希)」、ふたりの少女の物語が描かれる。記憶を失った状態で放置された劇場に閉じ込められたふたりは、脱出の手がかりを掴むため、劇場が指定する舞台の公演をおこなっていく。公演の成功を目指すリズムゲームパートと、会話や探索ができるアドベンチャーパートを交互にプレイして、物語を進めていく流れだ。
プレイヤーが操作するのは、舞台監督として舞台裏を駆け回るアレフとなる。リズムゲームの操作はシンプルで、ノーツの種類は上下に現れる赤と青ふたつのみ。使用するキーも最大4つと、初心者でも挑戦しやすい分かりやすさだ。
特徴的なのは、ランベースのプラットフォーム・アクションとしての側面も同時に備えていること。譜面が流れてくるのではなく、自動で走るアレフに合わせてノーツを叩くことで、崖を飛び越えたり障害物を避けたりといったアクションを成功させていくかたちになっている。リズムゲームをプレイすることが、画面上で準備に駆け回るアレフを操作することに繋がり、舞台を成功へと導く過程そのものを同時に体験することができるのだ。
舞台上では、『オズの魔法使い』や『シンデレラ』、『アーサー王伝説』など、有名な古典作品をリオラが歌唱とともに演じていく。しかし、長く放置されているこの劇場では、作品がゆがみ、本来のストーリーとは異なる展開を見せることが多くある。ときには、ゆがんだ役がふたりの前に立ちはだかり、戦闘になることも。
そのような非常事態に何度も直面して、アレフとリオラそれぞれがどのような思いを抱き、葛藤し、試行錯誤するのか――それらを具体的に掘り下げてくれるのが、幕間としてプレイするアドベンチャーパートである。ふたりが少しずつお互いのことを知り、ときには些細なことで言い合いになったりもしながら、舞台での出来事を経てしだいに変化していく関係性が描かれている。
アレフとリオラはなぜ記憶を失い、劇場に閉じ込められているのか? そういった背景が少しずつ垣間見えてくるような、また一歩真実から遠ざかるような……そんなふたりのドラマにしっかりと焦点をあててくれるアドベンチャーパートも、非常に読みごたえのある内容となっていた。
ゲームプレイと物語が結びつく独自の体験
本作をプレイしてもっとも印象に残っているのは、やはり舞台でのプレイ体験と、公演ごとにテーマをもってまとめあげられた魅力的な楽曲群だ。
ときに穏やかに、ときに激しく舞台をかたちづくる楽曲に浸り、音を合わせてキーを叩く。それ自体がひとつひとつ舞台を進行させるアクションとなり、公演とともに物語を前に進めていく――この体験は、筆者にとっては本作でしか味わったことのない、非常に新鮮かつ爽快なものだった。音に合わせた操作が展開に絡んでくることで、楽曲への思い入れもひときわ強いものとなった印象がある。
一方で、リズムゲームとして見たときに、少々変則的な難易度の高さを併せ持つ側面もある。譜面自体は決して複雑なことを要求してこないが、特にストーリー終盤のステージにおいて、ノーツの視認性をあえて悪くしていたり、速度が変化して視覚頼りでタイミングをはかることが難しくなったりと、挑戦的な内容もいくつか含まれている。
しかし、どれも変化球ながらストーリー状況に合わせた内容となっているので、物語上の難関として譜面を楽しめるという魅力でもあった印象だ。慣れ親しんだ“リズムゲーム”の枠を超え、単純な難しさだけでなく、特殊な譜面攻略に挑戦できる作品だといえる。
公演を成功させるごとに明らかになっていくストーリー・キャラクターの掘り下げにも要注目だ。忘れ去られた劇場に閉じ込められたふたりの少女という、閉鎖的で、どこか退廃的な美しさを持つ本作のテーマに相応しく、本作は暗示を含む描写・展開がたぶんに含まれている。きっとクリア後には、描写を反芻して考察するような余韻を残してくれることだろう。
登場人物がなにを思い、世界はなにを示しているのか。そういったことに思いを馳せながら世界観に浸るのが好きなユーザーには、ぜひともチェックしてほしい作品である。
誰でも最後まで、彼女たちの物語を見届けられるように――開発者メールインタビュー
今回、開発を手がけるQueseraGamesの代表を務めるJaehyun Park氏に、メールにてインタビューをおこなうことができた。ここからは、その内容をお伝えしていこう。
――「舞台」というテーマを選んだ理由についてお伺いしたいです。
Jaehyun:一般的なリズムゲームでは、音楽はプレイヤーがリズムに合わせて操作する対象ですよね。よい楽曲が流れ、それに合わせて手を動かす楽しさが中心になります。
私たちは、そこからもう一歩踏み込んでみたいと考えました。その曲がなぜ今流れているのかが物語の中で説明され、キャラクター自身が歌い、プレイヤーが操作するノーツもその歌の一部になったらどうだろう、と。そうするためには、歌が流れることに違和感のない場所が必要でした。それが舞台だったのです。舞台の上であれば、人が突然歌い出しても誰も不思議には思いませんから。
劇場という設定は、ゲームの構造そのものも決定づけました。ニエンタムの世界では、『オズの魔法使い』や『シンデレラ』、『かぐや姫』といった古典作品が演目として上演されます。しかし、世話をする人がいなくなったことで、上演される演目はゆがんでしまっています。
アレフとリオラは、それらを一つずつ修復していきます。舞台裏で公演の準備をし、舞台に上がって公演を完成させる。この一連の流れが、そのままひとつのチャプターになりました。舞台監督となったアレフと、役者となったリオラという二人の役割も、そこから生まれたものです。
――本作は、「リズムゲーム」の枠を超えた、「歌劇のゲーム化」ともいえる新たなジャンルであると感じています。舞台進行とリズムゲームが並行する本作のゲームシステムを作っていくうえで、苦労した点やこだわった点はどんなところでしょうか。
Jaehyun:最も難しかったのは、「見ること」と「操作すること」が互いの妨げになってしまう点でした。舞台演出を華やかにするほどノーツが見えにくくなり、反対にノーツを見やすくすると、舞台そのものがリズムゲームの操作画面のようになってしまいます。
早期アクセス版では、実際に「画面の変化が大きすぎてノーツを見失う」という意見をいただきました。私たちも最後まで、この二つの要素のバランスを取り続けることになりました。最終的には、場面ごとにどちらを重視するか、一つずつ決めていくしかありませんでした。
こだわった点は二つあります。一つは、演奏の腕前が原因で物語の進行が止まってしまわないようにすることです。リズムゲームが得意でなくても、最後までこの公演を見届けられるようにしたいと考えていました。そのため、演奏の腕前によってエンディングが分岐する仕組みは、当初から採用していません。分岐が生じるのは、会話中の選択肢だけです。
もう一つは、その反対に、演奏が得意な方にもリズムゲームとしての手応えを感じてもらうことです。早期アクセス版では、「ストーリーモードの難易度が低すぎる」という意見が、韓国語と日本語の両方で同じように寄せられました。そこで正式版では、従来の易しい難易度はそのまま残し、ストーリーモードにハード難易度を追加しました。
構造について少し説明すると、一つのチャプターは舞台裏と舞台上の二つに分かれています。舞台裏では、二つのキーで操作するランナー型のリズムアクションを通じて、公演の準備を進めます。そして舞台に上がると、画面全体に広がるノーツが、公演そのものを形作ります。チャプターのボス戦では、ボスとリオラが歌を掛け合う形式で進行します。
一方で、この構造を実現するには非常に多くの時間が必要でした。楽曲ひとつひとつに物語、演出、アクションのすべてが結びついているため、楽曲がそのまま一つのステージになっていたからです。その結果、早期アクセス期間は当初の想定の3倍にまで延びました。それでも、この方式を変更することはありませんでした。
――本作の大きな魅力であるオリジナル楽曲についても、詳しくお伺いしたいです。実際の古典作品をミュージカルに落とし込むために、どういった工程をふまえていったのでしょうか。
Jaehyun:ニエンタムの楽曲は、ほとんどの場合、まず場面を考えるところから始まりました。そのチャプターではどのような物語を舞台に上げるのか、原作のどの場面を歌にするのか、そして誰がその歌を歌うのか。そうした点を先に決めてから、楽曲の制作に取りかかりました。曲が完成すると、それに合わせて演出やノーツを設計していきます。楽曲をきっかけに場面そのものが変わったこともありました。
原作をそのまま再現したわけではありません。ニエンタムの劇場では、公演が長いあいだ放置されたことでゆがんでしまった、という設定があります。そのため、原作のどこをどのようにゆがめるのかを決めることが、脚色の出発点になりました。
ストーリー楽曲はすべてScarlette氏が作曲しました。ボーカルにはななひら氏とSennzai氏が参加しています。リズムゲームをプレイされている方には、なじみのある名前かもしれません。ストーリーとは別に、自由に選曲して遊べる楽曲については、リズムゲーム界隈のさまざまな作曲家に制作を依頼しました。]
――最後に、本作でもっとも重要なストーリーについて、プレイヤーに期待してほしいところや注目してほしいところをお聞かせください。
Jaehyun:ふたつ、お伝えしたいことがあります。
ひとつめは、すでに知っている物語だと思ってプレイしていただいても構わない、ということです。『オズの魔法使い』も『シンデレラ』も『かぐや姫』も、誰もが知っている物語ですよね。ただし、ニエンタムの劇場では、それらの公演が長いあいだ放置されたことで、少しずつゆがんでしまっています。
原作とどこが違うのか、なぜ違っているのか。そのことに気づいた瞬間から、このゲームの物語が始まります。そして、そのゆがみはアレフとリオラ、ふたりの物語にもつながっています。
二つ目は、歌を台詞として聴いてほしい、ということです。ニエンタムにおいて、歌は単なる背景音楽ではありません。その場面でキャラクターが語っている言葉そのものです。リオラが舞台で歌う歌も、ボスがそれに応じて歌う一節も、すべて物語の一部になっています。歌詞を追いながらプレイすると、同じステージでも少し違った見え方をするはずです。
最後の幕がどのように下りるかは、プレイヤーの選択に委ねられています。どこまで体験できるのかについては、ここではお話ししません。ただ、スタッフロールが流れたあとに、もう一度タイトル画面を見てみてください。「ニエンタム」という名前と「Op.ZERO」という番号が、最初に見たときとは少し違った意味を持って感じられるはずです。
――ありがとうございました。
『ニエンタム — オプス・ゼロ — (Nientum - Op.ZERO)』は、2026年10月14日よりPC(Steam), Google Playにて正式リリース。iOS版も後日配信予定だ。舞台のゆがみを通じて描き出される、ふたりの少女のための物語。その結末は、プレイヤーの選択によって分岐する。気になった方はぜひ手にとって、自身でふたりの物語を見届けてみてほしい。
| 基本情報 | ニエンタム — オプス・ゼロ — (Nientum - Op.ZERO) |
|---|---|
| 開発 | QueseraGames |
| 販売 | QueseraGames |
| 配信日 | 2026年10月14日 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 2,200円(Steam) |
| 2,200円(導入チャプター無料)(Google Play) |
ライター:しわしわ 編集:レイリー