2026年9月17日〜20日に、千葉県・幕張メッセにて開催された「東京ゲームショウ2026(以下、TGS2026)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。
本稿では、出展タイトルの中から、筆者が注目した『1999トコヨビル』の試遊レポートと開発者インタビューをお届けしよう。

従業員の秘密を握り、トコヨビルから生き延びろ
『1999トコヨビル』は、屋内遊園地・トコヨビルに迷い込んだ少年・灯良(あきら)が、ビルの従業員として働きながら住民たちとの関係を築き、脱出を目指すホラーアドベンチャーゲームだ。開発は常夜不動産、販売は講談社が手掛ける。

物語の舞台となるトコヨビルは、営業こそ続いているものの、客がほとんど訪れないさびれた屋内遊園地だ。館内には、フードコートや劇場、アトラクションなどの施設があるほか、大小さまざまな水槽も設けられている。
そんなトコヨビルに忍び込んだのは、本作の主人公・灯良(あきら)だ。彼が扉をピッキングして中に入った先は、カフェスペース。近くにあった金庫からお金を盗んだところ、謎の男に見つかってしまった! 青紫色の髪と黄色の瞳が印象的な男は、バーテンダーのような格好をしており、どうやら店のスタッフらしい。
灯良はお金を盗んだことをなんとかごまかそうとするが、上手くいかない。この男は、自分がトコヨビルの支配人・夜野(やの)であることを明かすと、ここで無賃金で働くならば、命は助けてやると提案してきた。というわけで、灯良はここで働くことになった。
ここで本作のゲームシステムを紹介しよう。基本的にはポイント&クリックをしながら進むビジュアルノベルゲームだ。トコヨビルには個性豊かな住民たちがいるが、中には灯良の命を奪いに来る人物もいる。2階や3階にある彼らの部屋に入って秘密や弱みを握り、彼らとコミュニケーションを取りながら生き延びなければならない。途中で差し込まれる「選択肢」は慎重に選ばなければ、場合によっては即ゲームオーバーになってしまう。
今回東京ゲームショウのために特別編集された試遊版では、灯良と夜野が出会ったあと、他のスタッフに挨拶をすることができた。会話できたスタッフは、全部で4人だ。1人目は、紺色の髪でスタッフジャンパーの着崩し方が気になる女性・鮫島だ。彼女は普段、水槽の管理をしているそうだが、詳しい仕事内容については夜野に聞いてほしいと口を濁す。のほほんとして人が良さそうだが、実際にはどんな人物なのだろうか…。
次に灯良が声を掛けたのは、トコヨマン。赤いヒーロースーツを身にまとったトコヨマンは、話してみると意外としっかりしていてバイト先にいてくれたら助かる頼もしい先輩といったところだ。
次に話したのは、ドラキュラ伯爵。一人称が「吾輩」の彼は、この地球に存在する最後のドラキュラだという。血を吸うような野蛮なことはせず、紅茶を飲むらしい。新月の夜には気をつけるようにとウインクしてきたが、果たしてどこまで本気なのだろうか。
最後に話したのは、ロリータファッションを身にまとった女性・カメリアだ。なにかと高圧的で、年齢を聞いても「あんたに関係ある?」とはぐらかされてしまった。占い師のようだが、この先上手くやっていけるだろうか、不安が残る。
このような個性的なキャラクターとの会話に加え、ポイント&クリックによる探索やピッキングなど、物語への没入感を高める直感的な操作も盛り込まれていた。
開発者インタビュー:3人の創造性が融合する作品
試遊をした後、本作のシナリオを担当する永瀬満月氏にお話を伺った。常夜不動産は、シナリオの永瀬氏、グラフィックとキャラクターデザインの荻野新月氏、そしてプログラミングとゲームデザインの湊あおい氏による3人体制だ。なお、音楽は『ダレカレ』の音楽も担当したナカシマヤスヒロ氏が手掛ける。
永瀬氏と荻野氏は、以前から2人でノベルゲームを複数制作してきた。共通の友人から「絶対合うから」と紹介され出会った2人は、以前から永瀬氏が書いた話に荻野氏が絵をつけるという遊びを続けていたのだという。もともとは自分たちが楽しみたいだけでやっていた活動だったが、あるときにせっかくならゲームにしてみよう、という話になったと語ってくれた。
ゲーム制作はシナリオ先行で進む。ゲームにする前に、小説家でもある永瀬氏がキャラクターごとの短編小説を書き、荻野氏がそれを読んだイメージでキャラクターを描いていく。表情などはもちろん、髪型などの細かな部分も永瀬氏は一切口出しせず、荻野氏が小説から思い浮かべたものをそのまま使うとのこと。文章でキャラクターの個性を細やかに表現する永瀬氏の力と、その文章を読み取って絵にする荻野氏の力、そしてお互いへの信頼があるからこそできる手法だと言えるだろう。
そんな2人は、講談社ゲームクリエイターズラボのフェローとして担当編集者のサポートを受け、2024年6月にはラボメンバーに採択された。本作の開発にあたっては、プログラマーにも参加してもらおうと考え、とあるイベントで湊氏に「一緒にゲームを作りませんか?」と声を掛けたという。
次に、パブリッシングを手掛ける講談社の編集者の方との関係についても伺った。基本的にゲームの内容そのものに口を出すのではなく、制作者が「作りたいもの」に対して、「こうしたらもっと伝わる」という客観的な意見をくれるので助かる、とのこと。シナリオ面で具体的に言うと、伏線の管理やキャラクター情報のチェックや、締め切りの管理も担っている。時に背中を叩いてくれる感覚なのだそうだ。
実際に本作を試遊してみると、シナリオ、キャラクターデザイン、ゲームデザインという3つの要素それぞれに、作り手の技が光っていることを実感した。なかでも筆者が惹かれたのは、やはり永瀬氏のシナリオだ。文章を読むだけでその場の情景や空気感がありありと伝わってくる。個性豊かなキャラクターたちの台詞も実に生き生きとしており、思わず声に出して読みたくなるものばかりだ。
もちろん、荻野氏が手掛けるキャラクターデザインも魅力的だ。トコヨマンの胸に大きく描かれた「T」の文字や、伯爵のたなびくマントなど、細部にまでキャラクターの個性が表れている。永瀬氏の紡ぐ物語と荻野氏の描くビジュアルが互いを引き立て合っている。
そこに加わったのが、湊氏によるゲームならではの演出である。例えば、ピッキングの場面では、ただ選択肢を選ぶのではなく、自ら手を動かしているような感覚を味わえた。画面が乱れる演出も含め、プレイヤーが「ん?」と違和感を覚えた瞬間に、絶妙なタイミングで仕掛けが入る。文章を読む楽しさに、自分で操作して物語を体験する楽しさが加わった印象だ。
これまで永瀬氏と荻野氏の手掛けるノベルゲームを追い続けてきた筆者としては、2人が築き上げてきた物語とビジュアルの世界に、湊氏らしい演出が加わったことが何よりうれしい。3人のクリエイションが掛け合わさることで、ノベルゲームとしての魅力はそのままに、ゲームとしての体験が一段と豊かになっている。本作は、その進化を随所に感じられるタイトルだった。
『1999トコヨビル』は、2026年発売予定で、プレイ時間は約10時間を想定している。ホラーと、人間関係の駆け引きが絡み合うさびれた屋内遊園地からの脱出に興味がある方は、今すぐSteamのウィッシュリストに登録しておこう。
| 基本情報 | 1999トコヨビル |
|---|---|
| 開発 | 常夜不動産 |
| 販売 | KODANSHA |
| 配信日 | 2026年内 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:ばんじーよこすか 編集:LayerQ