【デジゲー博2023】ゲームイベントの醍醐味『OU』『CultureHouse』『マロンの日』 ライター注目 第5弾


ばんじーよこすか

2023年11月12日に秋葉原UDXで同人ゲームとインディーゲーム限定のゲーム展示・即売会である「デジゲー博2023」が開催された。本記事では、筆者がデジゲー博2023で試遊して気になったゲームと、さまざまなサークルを回って感じたことを合わせてレポートする。

第11回目の開催となったデジゲー博2023

デジゲー博は、2013年から開催されている同人ゲームとインディーゲーム限定の展示・即売会である。第一回の出展数は97サークルであったが、第十回の開催となった昨年のデジゲー博2022では220サークルが出展、約1700人が参加した。歴史と規模ともに最大級の同人・インディーゲーム限定のオフラインイベントである。

過去のデジゲー博の様子を知りたい方はオフィシャルサイトから、今年のデジゲー博の様子は公式Xからもチェックできる。どんなサークルが出展していたか確認したい方には、Webカタログも便利だ。

デジゲー博 | 同人&インディーゲームオンリー展示・即売会

参加サークルの多様性もデジゲー博の大きな魅力のひとつである。ひとりでシナリオ執筆から開発まで手がけているサークルや、学生が開発しているサークル、AAAゲームの開発も行うような複数人が集まったチームのサークルも出展していた。

また、今年は事前の入場証販売が実施されず、当日受付で入場証が販売される形に変更され、秋葉原UDXの2階と4階のふたつのエリアで開催された。

同人・インディーゲームの海に飛び込む

筆者は時間の許す限りサークルを回ったが、いずれも個性的かつ創造的なゲームばかりであった。その中でも、個人的に気になったゲームをいくつかご紹介していこう。

写真と取材内容は、当日取材対象の方々に許可を頂いたものです。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。

『OU』世界観と音楽に魅了されて

先日の渋谷パルコで開催されたイベントで、その美しすぎる世界観と音楽に魅了されたアドベンチャーゲーム『OU』のサークル(株式会社ジー・モード)にお邪魔した。

『OU』は、記憶をなくした主人公OUとなり、オポッサムという小動物のサリーに連れられ、不思議な世界を進んで記憶を取り戻していくアドベンチャーゲームである。

▲当日配布されていたポストカード

ブースには、たくさんの原画や缶バッジなどのグッズが展示されており、たくさんの『OU』のファンの方々が美しい原画に注目していた。

さらに、企画とシナリオ、デザインを手がける幸田御魚氏が当日その場で描かれたイラストも展示されていた。

▲幸田御魚氏直筆のイラスト

こちらの動画には幸田御魚氏が主人公OUとオポッサムのサリーを描く様子が収められている。繊細な線で描かれる『OU』の世界を楽しんでほしい。

別のサークルでは、『OU』の音楽も手がけた椎葉大翼氏も出展されていた。椎葉大翼氏はフリーランスの作曲家で、以前は任天堂で多数のゲームタイトルの音楽を制作してきた方である。ブースでは、椎葉氏が手がけた曲が収録されたLPやCDが展示・販売されていた。

▲レコードプレーヤーで音楽を聴く贅沢

椎葉氏にゲーム音楽の制作について少し話を伺った。

椎葉氏は、ゲームのコンセプトアートと曲が必要なシーンのリストを見て音楽を制作するそうだ。もし、ゲーム内で使われるシーンが具体的に決まっていない段階であれば、使う場面の説明文からイメージして制作するのだという。

▲『OU』の楽曲はこちらでも聴ける

椎葉大翼氏のYouTubeチャンネルでは、椎葉氏がこれまでに制作したさまざまな楽曲の演奏が投稿されている。ぜひゲームと共に椎葉氏の音楽の世界を感じてほしい。

『OU』は、Steam版と共にサントラも発売されている。さらに、2023年冬には追加コンテンツが配信され、多言語に対応する予定だ。

▲こちらは椎葉氏もお気に入りの一曲
OU on Steam
"Between somewhere and someone." U-chronia is a mysterious world constantly changing like a book whose pages are flipped out of order. You will wear the shoes of OU, the protagonist, to live through this game-shaped experience—without knowing what it really is.

『CultureHouse』ゲーム開発の進捗を感じて

▲育成アドベンチャーゲーム『CultureHouse』

続いて、育成アドベンチャーゲーム『CultureHouse』をご紹介しよう。舞台は、20世紀の産業革命の影響を受けて生まれた、機能性を重視した住宅であるモダニズム住宅。失踪した生化学者の研究を引き継ぎ、7日間で謎めいた生命体を育てていく。

このゲームについては、9月の東京ゲームショウで筆者が試遊した際のレポートがあるので、気になる方は合わせてチェックしていただきたい。

【TGS2023】謎の生命体と迎える7日後の終末とは?『CultureHouse』Selected Indie 80 ブースレポート
「東京ゲームショウ2023」の出展タイトル『CultureHouse』の試遊レポートを開発者インタビューも交えてお届けする。謎の生命体を培養する7日間。その終末とは?

筆者は、これまでこの『CultureHouse』を4月のTOKYO SAND BOXと9月の東京ゲームショウで試遊してきた。そのたびに発売に向けてこのゲームの開発が進んでいる様子を体感している。

今回は、ガスマスクを被った少女が登場していた。この少女はガスマスクをしており、この少女の国籍も世代もはっきりしない。

▲「私に近寄らないで」と言うガスマスクの少女

この少女は、自分に近づいてくるプレイヤーに対して、「近くに寄るな」と言う。その理由を聞いても、この少女の言っている意味がよくわからない。プレイヤーに人捜しをお願いすると、この少女は消えてしまった。一体どういうことなのか…。この後どんな展開になるのか、全く見当がつかない。

▲「この世界」はどんな世界なのだろう…

概して、今回のようなゲームイベントでは、大きく分けて発売前のゲームと発売後のゲームが展示される。『CultureHouse』のような開発中のゲームをたびたび試遊していると、ゲームが出来上がっていく様子を感じられ、愛着も湧いてくる。これもこのようなオフラインのイベントに出向く醍醐味のひとつといえよう。

『CultureHouse』は、11月25日に九州産業大学で開催されるCEDEC+KYUSHU 2023の「インディーゲームコーナー」に出展予定とのこと。福岡にお住まいの方は、行ってみてはいかがだろうか。

発売は2025年の予定だ。一体なにが起こるのかわからないホラーやサスペンスが好きな方はウィッシュリストに追加しよう。

CultureHouse on Steam
CultureHouse is a nurturing + adventure game based on biological cultivation experiments. Set in a building influenced by 20th-century modernist houses, the game portrays serene and strange days, unravels the mysteries hidden behind the experiments, and culminates in the arrival of the apocalypse.

『マロンの日』かわいさと癒やしを動物とともに

続いて紹介するゲームタイトルは、『マロンの日』である。

▲『マロンの日』トレ-ラー

プレイヤーは子ウサギのマロン。個性豊かな動物たちの住む街でさまざまな冒険をしたり、ミニゲームを楽しんだりする動物RPGゲームである。

このゲームの一番特徴は、懐かしのゲーム機で遊べることだ。

▲レトロでかわいいキャラを見ているだけで癒やされる
▲表示されるのはひらがなとカタカナのみ

筆者はこの携帯ゲーム機を手にしたときに、つい「懐かしい!」と声を出してしまったが、10代の方には「これは何ですか?」と言われる場面もあるのだと言う。あなたはどちらのタイプだろうか。

この『マロンの日』の開発は、日英翻訳者でもあるnpckc氏が手がけている。

『マロンの日』は、2024年に発売予定。レトロなドット絵とデジタルな音楽のほのぼのとした世界を楽しみたい方は、ウイッシュリストに追加しておこう。

Marron’s Day on Steam
Marron’s Day is a silly adventure game where you’re a bunny! You love your friends but love carrots even more. Explore the town, run errands for your animal friends, and don’t let anyone catch you swiping the carrots from the garden (again)!

デジゲー博2023でしか味わえない体験

今回のデジゲー博2023では、ゲーム開発者、ゲーム音楽の作曲家、日英翻訳も手がけるゲーム開発者の方など、さまざまな職種の方々と交流することができた。それぞれのプロフェッショナルから作品への情熱、ゲーム制作の裏側にある物語を感じていると、あっという間に閉会時刻となってしまった。

また、デジゲー博2023には、同人ゲームやインディーゲームを愛する方々が集まっており、その居心地の良さも格別であった。同じ趣味を持つ、自分のようにゲームを楽しむ「同士」と同じ空間で同じ時間を共有するのは、コミュニティ全体にとっても、一人一人にとっても非常に価値のあることだと感じる。

来年のデジゲー博2024への期待が高まる。

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