旅人や冒険者の憩いの場。中世ファンタジー世界で魔法のカクテルを振る舞おう『タヴァントーク』プレイレポート

朝比奈 / Asahina

2024/06/21

2024/09/14

本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。

タヴァントーク』は、いわゆる"剣と魔法"の中世風ファンタジー世界を舞台に、宿屋を訪れる旅人や冒険者を相手に切り盛りしていくビジュアルノベルゲームだ。ドイツのゲーム開発スタジオ"Gentle Troll Entertainment"が手掛ける。

開発チームより「Where Coffee Talk meets Dungeons & Dragons.」と説明されているように、本作は『Coffee Talk』と『ダンジョンズ & ドラゴンズ(D&D)』から多大なインスピレーションを受けている。本稿では、その内容についてご紹介しよう。

Steam で 10% オフ:タヴァントーク
旅人亭へようこそ!『Tavern Talk(タヴァントーク)』はD&Dにインスパイアされたファンタジー世界が舞台の、心地よいビジュアルノベルゲームです。宿屋のオーナーとなってうわさ話を集め、魔法のドリンクを提供し、人生を変えるクエストへと向かう冒険者たちと出会いましょう。

宿屋で冒険者たちと語らおう

竜と魔法が支配するフェゾア共和国の北部。首都テミスを彼方に望む、街道沿いの町ゼニスを見下ろす丘に建つのが、本作の舞台となる宿屋「旅人亭」。プレイヤーはそのオーナーとして、宿屋を訪れる常連客、旅人や冒険者たちに一時の安らぎを提供していく。

本作のゲームシステムは、グラフィックスとしての動きや表現は控えめに、テキストによる変化のある物語を楽しむ"ノベルゲーム"、または、"ビジュアルノベル"と呼ばれるものだ。

物語に変化を与えるための基本的なメカニクスとして「会話の選択肢」があり、それによってお客の反応を引き出し、新たな内容が紡がれていく。

キャラクターの深堀りは基本として、彼らから聞いた世間話やうわさ話から「クエスト」として取りまとめて掲示板に張り出しておくと、今度は別のお客がそれを受注することで、新たな冒険の始まりと結末を目にすることもある。

宿屋から舞台が移ることはなく、そうした人々の会話の流れから汲み取れる物語を、オーナーの視点から楽しんでいくというのが本作だ。ただの傍観者ではなく、ときにはちょっとした後押しや手助けをすることもある。

当事者ではないので耳にしたものがすべてであり、ときに想像力を働かせたり、思考を巡らせたりすることもあるが、この世界観に沿った物語を"読むこと"を楽しむプレイヤーにとってこれほど魅力的なものはないと感じる。

▲筆者はこうした世界を形作るロアが大好物だ

なお、本作の世界観を形作るキャラクターの情報や、各地の情勢、飲み物のレシピに至るまで細かくテキストが添えられており、ゲーム内メニューからいつでも参照可能。

こうしたロア(世界設定や背景、伝承など)を補完する用語集的なものは、ゲームプレイには直接影響しない場合もがあるが、物語の理解と没入感にひと役買ってくれるはず。これもひとえに、後述する翻訳の力に寄るところが大きいと思うところだ。

魔法のカクテルを調合して振る舞おう

そして、もう1つの要となるのが「カクテル(飲み物)」の提供だ。

旅人亭が提供するのは魔法のカクテル。お客の要望を聞き、適切なカクテルを選び、レシピに沿って5種類の魔法薬を混ぜることで完成するもので、実際にドラッグ・アンド・ドロップでビーカーに注いで分量を調整していく。

お客の要望に応じたメモと、レシピも目の前にある黒板に書いておくことでいつでも参照できるので、調合は難しくない。配分を間違えても使い魔のアンドゥに飲ませてしまえばいいので、失敗は気にせずとも大丈夫だ。

ときにどちらか一方のカクテルを作って提供するかの選択に迫られ、備わった魔法の効果によって、それが例えばクエストの結果に影響を及ぼすこともある。

迷うこともあるかもしれないが、どういう展開を見たいかという気持ちに従ってしまって構わないので、それによって語られる物語を期待して提供するといいだろう。最初は無愛想だったお客も、口が軽くなることもあるかもしれない。

なお、スタート時点で調合できるカクテルのレシピは5種類だが、お客から素材をもらうことでその数は増えていく。それによって新たな展開が望めることもあるので、プレイヤーの選択の数だけ見える物語が違ってくるはず。

そのときを楽しみに旅人亭を営んでいこう。

▲ちょうどよく収まり、繊細な操作は必要ないので大丈夫

世界観を表現した翻訳

本作の翻訳は、英日ゲーム翻訳者の小川公貴氏が担当されている。

近年では『Citizen Sleeper(シチズン・スリーパー)』や『Sea of Stars』に携わられており、そしてまさに『Coffee Talk』も担当されている。知らず知らずのうちに、小川氏の担当作品に触れられている方も大勢いらっしゃるのではないだろうか。

特に本作のように特定の世界観からインスピレーションを受け、その世界観をベースとしたテキストを読むことを主軸としている場合、翻訳が大きく寄与するものだと筆者は考えている。

読書を愛する方の中には、知らない作品でも翻訳者を見て購入するという(筆者のような)方が一定数おられることと思うが、ゲームにおいてもそういう視点が徐々に生まれているように感じる。小川氏の手腕が遺憾なく発揮された本作を、この機会に手にとってみてはいかがだろうか。


基本情報 タヴァントーク
開発 Gentle Troll Entertainment
販売 Gentle Troll Entertainment
配信日 2024年6月21日 / 日本語有り
定価 1,980円(Steam

この記事で紹介されているゲーム

Coffee Talk

インディー

カジュアル

アドベンチャー

日本語対応
50%¥750

シチズン・スリーパー

RPG

インディー

アドベンチャー

日本語対応
¥2,300

タヴァントーク

インディー

カジュアル

アドベンチャー

シミュレーション

日本語対応
10%¥1,782

Sea of Stars

インディー

アドベンチャー

RPG

日本語対応
30%¥2,800
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発売日2022年5月5日
ジャンル
アドベンチャー
RPG
インディー

カテゴリ
シングルプレイヤー
Steam実績
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Steamトレーディングカード
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シチズン・スリーパー

惑星間資本主義の荒野で生き延びろ。あなたは企業の束縛を逃れ、宇宙の辺境の荒廃したステーションに流れ着いた労働者だ。テーブルトークRPGを彷彿とさせる自由度の高い世界で、ステーションを探索し、友人を選び、過去を断ち切って未来を掴もう。


『Citizen Sleeper(シチズン・スリーパー)』は2022年の傑作インディーゲームの一つに数えられ、The Game Awardsにもノミネートされた、テーブルトークRPGを彷彿とさせるアドベンチャーゲームだ。星間資本主義社会の辺境で生き抜く数千人の故郷たる宇宙ステーション、“アーリンの瞳”を舞台に、練り上げられた奥深いストーリーが展開する。

デジタル化された人間の精神を有する疑似生命体、“スリーパー”であるあなたは今、その回収を目論む企業に追われている。個性豊かな人々が暮らす“アーリンの瞳”で生き延び、次のサイクルを迎えたければ、この奇妙な都会で友人を見つけ、生活費を稼ぎ、対立する派閥間でうまく立ち回らないといけない。



テーブルトークRPGにインスパイアされた『Citizen Sleeper』では、ダイス、クロック、ドライヴといった要素を用いて、ドラマに満ちた濃密な世界を自分らしく生き抜いていく。サイクルごとに振られるダイスを使って、限られた時間で何ができるか決断しよう。仲間を作るか、裏切るか。真実を暴くか、追っ手から逃れるか。時には時間さえも敵に回しながら、一歩ずつ問題を解決し、究極の自由を掴み取れ。



“アーリンの瞳”では様々な人々が、過酷な宇宙で生き残ろうと生活を営んでいる。廃物回収人、技術者、ハッカー、バーテンダー、屋台の店主など、それぞれ事情があってこの地へ流れ着いた人々を助け、友情を築いて、共に未来を切り拓こう。



ダイスを使ったハッキングが可能になると、あなたは何十年分ものデータが蓄積されたクラウドに侵入して、新しいエリアを見つけたり、秘密を暴いたりできる。これはあなただけが使える、自分の未来すらも変えられる能力だ。ステーション内ネットワークの奥深くでは、企業が闇に葬った秘密やデータの数々、そして暴走したAIたちがあなたを待っている。



エッセンアープ社にとって、スリーパーは道具でしかない。宇宙に散らばる所有物の一つにすぎない。それは搾取と略奪による宇宙開拓が是とされる、一部の特権的人類を中心とした横暴な社会の副産物だ。あなたの朽ちゆく体を回収するため、企業はその追撃の手を緩めない。格差社会や雇用不安、人間性、自由といったテーマを探求する、イマジネーション豊かに描かれるSF世界で自分の運命を切り拓こう。


『Citizen Sleeper』では、ダイス、クロック、ドライヴといった要素を用いて、ドラマに満ちた濃密な世界を自分らしく生き抜いていく。


毎サイクル振られるダイスを使って、様々なアクションを実行しよう。すべてのアクションは、自分が守るべき物や人の取捨選択に他ならない。そうした判断が周囲の人々の生活を変化させ、最終的にはステーションの未来を決める。


クロックはあなたの行動だけでなく、ステーションの他の人々の行動も追跡する。オーバールックバーの常連客になったり、ヤタガンから友人を守ったり。プレイヤーはクロックを通じて、自身のアクションの進捗や、周囲に与える影響を追跡できる。


このゲームでは「ドライヴ」と呼ばれるクエストを通じて、自分にとって重要なストーリーを選択し、先へと進められる。そうする中で5つのスキル(技術、電脳、忍耐、直感、交流)が育まれ、特殊能力や追加効果がアンロックされる。こうしたスキルの成長に応じて、この世界での生き方も変わっていくはずだ。


『Citizen Sleeper』の最新版には、リリース後に配信された3つの追加コンテンツ「電潮波」「難民」「浄化」がすべて収録されている。これらの物語がゲームの新たな終盤を形成していて、新しいキャラクターやステーション施設も登場する。

開発者について


Jump Over the AgeはGareth Damian Martin(they/them)が設立した、個人運営のゲーム開発スタジオです。GarethはGDCAとIndiecadeで賞に輝いたほか、The Games Awards、IGF Awards、GDC Awards、英国アカデミー賞の各部門にもノミネート経験があります。また、「世界観構築の達人」(Edge Magazine)や「インディーゲーム界で最も刺激的な才能の一人」(Eurogamer)とも評されます。