謎めいた悪夢のような世界を手探りで進み、その真相へと迫るパズル・ホラーADV『Post Trauma』プレイレポート

朝比奈 / Asahina

2025/04/27

本稿は事前にレビューキーをご提供いただき、執筆しています。

Post Trauma』は、『サイレントヒル』や『バイオハザード』シリーズといったクラシックなサバイバルホラーの名作にインスパイアされた、悪夢のような異世界を彷徨う中年男性ローマンの姿を描いたパズル・ホラーアドベンチャーだ。スペイン・バレンシアを拠点とするゲーム開発スタジオ"RED SOUL GAMES"が手掛け、架け橋ゲームズが日本語ローカライズをサポートしている。

鉄道の車掌として働くローマンがふと目覚めると、そこはまるで悪夢の中のような世界だった。不規則に歪んだ人気のない地下鉄構内。各国の文字が混ざりあったような表示が並ぶ案内板や、肉腫のような有機的な物質に侵食された壁。そして、異形のクリーチャー。なぜ自分がここにいるのかもわからぬまま、彼は暗闇を手探りで歩くかのようにこの世界を探索していくこととなる。

Steam:Post Trauma
Puzzle Horror game inspired by PS2 era classics. Navigate environments, tackle threats, and meet other lost characters in the depths of the Gloom.

謎めいた世界に潜む、隠された真実を暴き出せ

本作のゲームシステムは、閉ざされたエリア内に散らばるパズルを巡り、そこにハマるピースを探し出して正解にたどり着くことで、ある種のフラグが立ってストーリーが展開していく、というプロセスを繰り返していくものだ。

探索の舞台となるエリアは「地下鉄構内」「学校」といったテーマ性を持ったロケーションで、パズルとはそこで何かをしなければいけないという謎掛けであり、ピースとはそれを解くためのキーアイテムや情報。謎を解くことで探索可能な範囲が広がっていき、最終的にはそのエリアから脱出を果たすことができる。

ここで肝となるのは、緻密な観察眼と推理力。というのも、今そのシチュエーションにおいて何をしなければいけないのかがはっきりとは示されなかったり、必要なものが遠回りに配置されていたりするからだ。

あるパズルのギミックを解くために、シンプルにキーアイテムを探して揃えるだけであればまだわかりやすいが、散らばった複数の情報からヒントを読み取って操作するシーンもあり、捜索すべき範囲も広い。

また、ユニークな試みとしてインタラクトできるオブジェクトにカーソルが表示されず、代わりに画面右上に「目」のマークが表示されることで、ローマンの周囲に何かがあることを示す仕組みが導入されている。没入感があるが気づきを得にくく、端的に言ってしまえば手探り感が強いとも表現できる。

何か気になるものを見かけても、ローマンがそれを記憶に留めておいて後からチェックできるようなゲームシステム側でのサポート機能は存在しないため、プレイヤー自身でメモを取り、スマホでゲーム画面を撮影しておくといったアナログな手法に頼ることも有効。少なくとも筆者には必要だった。

探す・悩む時間がプレイ時間の大半を占め、それに限っては何だかホラーゲームと言うよりもミステリーゲームをプレイしている感覚もあったが、そうした立ちはだかる壁を乗り越えた先には大きな達成感が待っていることも事実。本作がパズル・ホラーを自称している意味がわかるというものだろう。

立ちはだかる異形のクリーチャー

この手の作品には付きものとして、もちろん異形のクリーチャーも登場する。クリーチャーデザインはわかりやすいゾンビや化け物といった風ではなく『サイレントヒル』からの影響が感じられ、生理的な気持ち悪さを感じさせるような一種異様なスタイルとなっているのはある意味で期待どおりかもしれない。

探索と謎解きに重きを置いている本作ではクリーチャーと遭遇する機会は限られてはいるものの、ここぞというシーンには登場し、ボス戦にあたる戦いも用意されている。

主人公ノーマンはいたって普通の小太りな中年男で、俊敏でアクロバティックな動きには期待できない。バールやハンマーといった近接武器を振るい、探索中に発見できればハンドガンやショットガンといった銃器も手にして戦うことになるが、近接攻撃や回避アクションを行うにはスタミナも気にしなければならない。

スタミナを使い切らないように上手く立ち回りたいが、クラシカルな固定カメラアングルなので慣れとコツは必要。現代の軽快なアクションと比べれば泥臭ささえ感じるが、それもまた味というものだ。

ホラー作品として完成度の高いデビュー作

Roberto Serra Gascón氏によって2022年に設立されたRED SOUL GAMESにとって本作はデビュー作となり、設立と同じ年に開催された「The Game Awards 2022」にて、その世界観を表すトレーラーが注目を集めたことを覚えている。

約3年という開発期間と幾度かの延期を経て世に送り出された本作は、ストーリーはやや難解だが考察の余地があり、ホラー作品としての雰囲気作りにも成功している印象。人気のない環境音だけが響く空間に、どこからか物音や何者かの息遣いが漏れ聞こえてくるような圧迫感・緊張感のある雰囲気は開発チームのセンスと言えるだろう。

荒削りな部分が残っているもののその完成度は高く、本作という経験を経た彼らの次回作にも期待したい。『Post Trauma』は、PC(Steam)・コンソール(PlayStation 5, Xbox Series X/S)にて2025年4月22日より配信中だ。


基本情報 Post Trauma
開発 RED SOUL GAMES
販売 Raw Fury
言語 日本語有り
配信日 2025年4月22日
定価 1,700円(Steam
1,760円(PlayStation 5
1,700円(Xbox Series X/S

この記事で紹介されているゲーム

Post Trauma

インディー

アドベンチャー

日本語対応
10%¥1,530
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発売日2025年4月22日
ジャンル
アドベンチャー
インディー

カテゴリ
シングルプレイヤー
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部分的コントローラサポート
ストアページリンク

Post Trauma

Puzzle Horror game inspired by PS2 era classics. Navigate environments, tackle threats, and meet other lost characters in the depths of the Gloom.

スペシャルエディション


ゲームについて

『Post Trauma』は、サバイバルホラーというジャンルを創り上げた古典的名作を現代的に解釈したゲームだ。謎の世界を突き進んだ奥深く、あなたは見も知らぬ場所で謎を解き明かすために足掻くことになる。生き延びるために、隠された真実を暴き出せ。

物語が明かされるにつれ、現実があなたの不安を搔き立て続ける。おぞましく歪んだ世界をあなたは進んでいくのだ。

『Post Trauma』の世界で、あなたは苦悩を抱えた車掌の男「Roman」(声:Togo Igawa)を操る。ひどいパニック発作の後、超現実的な空間で目を覚ましたRomanは、不気味な建築物と悪夢のような忌まわしい存在に対峙する。自分の身を守るために武器を振るうか、危険の少ない道を探すか、選択をするのはあなただ。


サバイバルホラージャンルの金字塔にインスパイアを受けた『Post Trauma』では、固定カメラ視点とUnreal Engine 5による美麗なビジュアルが融合し、不穏でありながらもどこか懐かしいホラー体験を生み出している。しかし、答えがわかったとあなたが感じた瞬間、この地獄絵図はその問いを一変させる。そして、最大の恐怖が待つ未知の世界へ足を踏み入れることになる。

この残酷な世界を生き延びるためには、一見無関係に見える謎を繋ぎ合わせなくてはならない。周囲の状況から推理すると、見えなかった手がかりや、思いがけない場所から重要な道具を見つけることができるだろう。

手がかりを見つけてパズルを解くと、徐々に自らが置かれた場所や脱出する手立てが見えてくる。忍耐と知恵をバランス良く活用することが生き残る鍵となる。そして、紙とメモ帳もおそらく。

豪華キャスト(Togo Igawa、Autumn Ivy、Hyoie O’Grady)によるフルボイスとNicolas Gasparini (Myuu)が手がける魅惑的でアンビエントなサウンドスケープ。『Post Trauma』は、長年にわたり愛されてきたシリーズへのオマージュであると同時に、プレイスタイルの新たな融合である。純粋な情熱と素晴らしい才能によって、真に特別な、忘れがたいホラー体験を作り出すことを本作は意図している。