本稿はレビューキーをご提供いただき、執筆しています。
『Tides of Tomorrow』は、他者の選択が自分の物語を形作る、革新的なナラティブアドベンチャーだ。フランスのモンペリエに拠点を置くゲーム開発スタジオ"DigixArt"が手掛ける。
大洪水により文明が沈んだ海洋惑星を舞台に、プレイヤーは「タイドウォーカー」としてプラスチックパンクの世界で絶滅の危機に抗っていく。 先行プレイヤーの「足跡」が自身の旅路に変化をもたらし、その決断もまた誰かの未来へ繋がっていく独特の体験。 シングルプレイの枠を超えた本作の魅力を、序盤のプレイフィールをもとにインプレッションをお届けしよう。


絶滅の危機に瀕した、死が結晶化する海洋惑星
本作の舞台は、大洪水によって文明の多くが飲み込まれた海洋惑星「エリンド」だ。自然に分解されることがほぼ無いとされるプラスチックがそこかしこに蔓延しており、あらゆる生命をプラスチック化させて死に至らしめる奇病「プラステミア」の脅威が世界を蝕んでいる。世界人口は30万人を下回り、もはや絶滅まで一刻の猶予もない。
プレイヤーは「タイドウォーカー」と呼ばれる漂流者の1人として海中で漂っていたところを目覚め、謎めいた女性ナーエによって引き上げられたことをきっかけに、この世界の運命に関わる旅路へと身を投じることになる。

エリンドの海で対峙するのは、思想を異にする3つの勢力だ。薬と交易を支配し力でねじ伏める無慈悲な「マローダー」、絶望的な環境で明日を夢見る生存者たちの集い「リクレイマー」、そして過去を崇拝する謎に満ちた組織「ミスティック」だ。どの派閥と関わり、誰と絆を深めるのか――。そこには安易な正解などは存在せず、それぞれの立場から見た視点と決断がもたらす、逃れようのない結末が待ち受けている。
プレイヤーが操る主人公自身も奇病「プラステミア」に冒されており、進行を抑える薬「オーゼン」を定期的に摂取して体力を回復していく必要がある。その入手手段は多岐にわたるが、必死にそれを求めるNPCにも分け与える選択肢も用意されているなど、やがて死に至る病に抗う要素として上手く作用している印象だ。
先行者の「足跡」が紡ぐ一期一会の冒険
本作の特徴は、プレイヤー同士の選択が時空を超えて交錯するユニークなシステム「オンラインストーリーリンク」にある。これは非同期型のオンライン要素であり、本作を先行してプレイしているフレンドやランダムな他プレイヤーを1人選択してフォローすることで、旅の先行者として主人公の旅路にもさまざまな変化を及ぼすというものだ。
主人公は「幻視」によって、フォローした相手の行動を再生するかのように「視る」ことができる。主要イベントを確認できる「本幻」と、同様に細かな行動を追う「余幻」が存在し、先行者がその場でどのような行動を取ったかを「残響(エコー)」として直接的に得ることができる仕組みだ。
また、道中で先行者がハシゴを直していれば労力をかけずにその道を使えるなど、協力プレイのような恩恵を間接的に受けられる点も面白い。

これは自分だけが影響を受けるわけではなく、自分に続く他のプレイヤーにも影響を与えることになる。会話の選択肢や行動によって、自身の思考パターンを示すパラメータも変化していき、例えば自力で解決する道を選れば「サバイバリスト」といったラベルが付与され、これが他者からフォローされる際の判断基準にもなる。
あなたが親切にしたNPCが、あなたをフォローする別のプレイヤーに対しても好意的に接してくれるといった因果関係の連鎖は、本作ならではの魅力と言えるだろう。

チャプター制で進行する物語は、海上に浮かぶプラットフォームを舞台に、先述の3つの勢力を軸としたコミュニティに関わる形で各地を巡っていく。目的地への移動にはボートを使用するが、本作はオープンワールドではなく、目的地を選択してエリアを切り替える方式を採用している。
しかし、どのレベルをどの順番で攻略するかを選べる非線形な構造となっており、その展開は先行者と自分自身の選択によって変化していく。タイドウォーカーという存在が、この滅亡の危機に瀕した世界にどのような潮流を生むことになるのだろうか。

余談だが、フォローした相手のユーザー名(SteamやPlayStationなど)はゲーム画面上にそのまま表示されるため、YouTube等での配信や、SNS等へのスクリーンショットの投稿には配慮が必要になる。本稿のスクリーンショットで一部マスクしているのもこれが理由だ。
主要な5つのマルチエンディング
ローンチ前に公開された開発チームのFAQによると、本作は10時間から15時間ほどで1つのエンディングへと到達するが、主要な結末だけでも5つのパターンが用意されている。フォローする相手を変えることで、前回とは異なる側面から物語を堪能できる点も本作の特徴だ。
自らの一歩が、時を超えて誰かの助けとなり、あるいは混沌をもたらす。この緩やかで、しかし確かな繋がりが生み出す一期一会の体験は、主要なゲームシステムこそ違うが、『Road 96』を手掛けた開発チームによる新たなナラティブアドベンチャーとしてふさわしいものだ。海洋惑星の運命を決定づける旅路で、プレイヤーは一体何を残すのだろうか。
『Tides of Tomorrow』は、PC(Steam, GOG)・コンソール(PlayStation 5, Xbox Series X/S)にて2026年4月22日より配信中だ。

| 基本情報 | Tides of Tomorrow |
|---|---|
| 開発 | Digixart |
| 販売 | THQ Nordic |
| 配信日 | 2026年4月22日 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 4,389円(Steam) |
| $29.99(GOG) | |
| 4,389円(PlayStation 5) | |
| 4,450円(Xbox Series X/S) |
ライター:朝比奈 編集:LayerQ









