タイムラインでアカウントを特定! 超能力を持つ"アクマ"が引き起こした事件を解明するネット探偵ADV『ミカクテイ事件の観測者-Demons'Timeline-』プレイレポート【東京ゲームダンジョン12】

Masa Kei

2026年7月23日

2026年5月3日に、東京・浜松町にて開催された「東京ゲームダンジョン12」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。

なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。

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ゲームダンジョン ► 2026年8月8日(土)、東京・浜松町でインディゲーム展示会を開催!
「東京ゲームダンジョン」・「大阪ゲームダンジョン」は個人や小規模チームが制作するデジタル・ゲーム(インディゲーム)の展示会です。手頃な出展料と充実した設備で、気軽に作品を出展・試遊できるイベントを目指しています。主催者も個人でゲームを作っているインディ開発者です。みんなで国内のインディゲームを盛り上げましょう!

ネット上の情報を頼りに怪事件を解明

ミカクテイ事件の観測者-Demons'Timeline-』は、ネット探偵「エル」の視点で、SNSのタイムラインだけで超能力殺人事件の真相を追う推理アドベンチャーゲームだ。開発元はDigitalCatsが手掛ける。

これまでにもエルは、超能力を持つ特殊な人間〈アクマ〉が引き起こす怪事件〈パラドクス〉の真相を解明してきた。

5件目の事件となる新しいパラドクスが起きたことを協力者の「箱内にゃすてりあ」から知らされたエルは、一週間の捜査で真相にたどりついてみせると宣言。独自に開発したAI姉妹の「ヨウコ」と「エレコ」に指示をして、いつものように事件に関する情報を集めたタイムラインを生成させ、推理をする。

エルの相棒としてサポートをするにゃすてりあもアクマの一人であり、「真意を読む能力」を使い、SNSの書き込みの裏に隠れた真意をエルに伝えてくれる。エルとAI姉妹、にゃすてりあを含めた「ネット探偵団」は、外での捜査は一切行わず、ネット上の情報だけで怪事件の真相を解き明かす。

Steam:ミカクテイ事件の観測者-Demons’Timeline-
世界最大のSNS「パロッター」から情報を集め怪事件の真相を解明する「ネット探偵」エルは、超能力者〈アクマ〉が引き起こす数々の怪事件〈パラドクス〉を調査してきた。エルは〈アクマ〉の1人である相棒、箱内にゃすてりあと共に、高度なハッキング能力や〈アクマ〉の超能力を駆使して、最後の〈パラドクス〉調査に挑む。

本稿は製品版の結末までプレイしたあとに執筆しているが、まずはデモ版でも遊べるチャプター1とゲームの基本的な流れをご紹介したあと、ネタバレをおさえながら結末のすごさについて少し触れたい。

捜査中の事件と、過去の怪事件が交錯

チャプター1では、「エンウンドー本社変死事件」に関するタイムラインを攻略する。大手ゲーム会社の本社の一室で、社員の男性が死亡しているところが発見されたという。

また、チャプター1の冒頭では、瞳孔が赤く染まった3人の男女が死亡している「赤の目連続怪死事件」の現場らしき映像が流れる。5年前に発生した、最初のパラドクスとされる事件だ。

本作のタイムラインには過去の怪事件の噂が飛び交っていて、そのぶん情報量は多め。捜査しているのは、あくまで最新の事件であるエンウンドー本社変死事件だということを念頭に置こう。

タスクをこなしてタイムラインを攻略せよ

本作に登場するSNSは「パロッター」、書き込みのことは「パロート」という。タイムライン攻略が始まったら、パロッターの機能を一通り使ってみながら覚えていこう。

アイコンをクリックすればプロフィールを確認できて、そのアカウントが投稿したパロートが並ぶ。コメント欄を選択すると、パロートに付いたコメントを見ることができる。X(旧Twitter)を使い慣れている人なら説明されなくてもわかるはずだ。

どんどんパロートに目を通していき、ハッシュタグを見つけたら片っ端から取得しておくとよい。ハッシュタグはあとで質問に答えるためのキーワードとして必要になる。

捜査でやるべきことは、画面右側に「タスク一覧」としてまとめられている。主なタスクは、事件関係者の表アカウントと裏アカウント(鍵アカ)をそれぞれ特定することだ。ほかには、キーワードや引用すべき投稿を探すタスクもある。すべてのタスクを片付けてから「最終推理」の質問に全問正解すれば、タイムライン攻略完了となる。

ペナルティなし! 地道に試せば先に進める

先述のとおり、捜査のメインとなるのはアカウントの特定だ。例えば、最初のチャプターのとあるアカウントはプロフィールに生年月日を登録しているため、年齢を推測できる。年齢だけでは所有者を絞り切れないが、他のパロートにも目を通して性別や職業を推測できる情報を集めていくと、候補は絞られてくる。

確信をもって特定するには実力が試されるけれども、間違えてもペナルティはないうえに時間制限もない。総当たりで正解を探してもいい。各種のヒント機能も充実している。先に進むだけなら本作の難易度は決して高くはないだろう。

数々の名作の後に続く気鋭の新作

本作はSF作品によく取り入れられる科学テーマのひとつを扱っており、美少女キャラも登場するアニメ調で、主人公が社会から少し浮いた変わり者という点が、MAGES.の「科学アドベンチャーシリーズの路線に近い。

ほかにも既視感のある要素が詰め込まれ、さまざまな作品のオマージュになっているように見える。探偵役の主人公は「エル」を名乗る匿名の人物で、七つの大罪をその名に冠したアクマたちが引き起こした殺人事件を捜査する。アクマの超能力は、目を通じて力を行使する。こう聞けば『DEATH NOTE』『セブン』『コードギアス』などの作品が思い浮かぶ人もいるだろう。

こう聞くとごった煮のように感じるかもしれないが、全体の味はしっかりと整っている。マンガ・アニメ的な要素に惹かれた方にもプレイしてみてほしい。そして、伏線回収やどんでん返しを求める人にはもちろん、テーマのある作品を探している方にもオススメだ。

SNSの闇の部分と本作に込められたメッセージ

テーマについて触れると若干のネタバレになってしまうことはご承知おきいただきたいが、本作のシナリオは結末まで見るとすごさがわかるタイプだ。その核心部分に至るまでに、人によってはあまり見たくないようなものを目にするのは避けられない。CAMPFIREにて実施されたクラウドファンディングのプロジェクトページ(リンク)では下記のように説明されている。

本作には現代のSNSらしい闇の部分が多く描かれている一方で、単なる悲観や風刺には決してとどまらず、確かに伝えたいメッセージを込めております。

本作のタイムラインには「あの人は裏アカウントではあんなことを言っている」という"裏側"が大量にあふれており、それを見て不快に感じる人もいる。感じ方は人それぞれなので、ぜひ結末まで見てほしいとすすめていいものか、迷う。

しかし、実際に結末を見て、制作者の言葉通り、単なる悲観や風刺にとどまらないものになっていると感じた。そのメッセージが伝わっているからこそ、Steamユーザーレビューの好評率が高いのだろう。

ネットの闇だけではなく"光"の側面も描く

本作の開発を手がけたアントラー氏にお話を伺うことができた。最後にそちらもご紹介しよう(インタビューパートは別ライターのレイリーが担当)。

開発のきっかけとなったエピソードは、学生時代にネット漬けの日々を送っていたことだったという。ネット掲示板が隆盛していた当時は匿名での書き込みがほとんど。だが、お互い匿名で知らない人同士のはずなのに、話し方や話題からなんとなくその人のリアルをうかがい知ることができた。そんな当時の独特な雰囲気を、なんとかゲームへと落とし込めないか考えていたとのことだ。

そこで、元々ミステリーゲームを作ることが夢だったこともあり、これまでに手がけたVRゲーム開発のノウハウを活かし、本作で初めてミステリーゲームの開発へ挑戦したそうだ。

本稿でも触れた『STEINS;GATE』をはじめとする「科学アドベンチャーシリーズからも、実際に強い影響を受けているとのこと。特に、刺激的な演出も多い『CHAOS;CHILD』から強いインスピレーションを受けたそうで、本作の事件の異常性を演出するカットインなどからもリスペクトが感じられる。

このほか、海外のミステリー系インディータイトルも研究しつつ開発を進めていったようだ。

本作の推理パートについては、単に物語を読み進めてもらうことよりも、「プレイヤー自身の手で推理してもらう」ことを重視して設計したとのことだった。誰も解明できなかった怪事件をプレイヤーの手で解き明かす、というカタルシスはやはりミステリーの醍醐味。

単なる推理だけでは詰まりやすいところを、パズル的な要素を組み合わせてよりゲームらしくすることでプレイヤーが遊びやすくするなど、さまざまな形で工夫を凝らしているとのことだった。

また、ゲームプレイの没入感を高めてくれるのが、にゃすてりあの能力発動時のカットインなどスタイリッシュな演出の数々だろう。こちらのお話を伺うと、当初はこういった超能力的なものが一切ない形で組んでおり、カットインなども用意されていなかったそう。

だが、それではゲームとしての見せ場に欠けることが気になり、派手な演出とともに超能力も取り入れてしまおうという流れになったそうだ。

本作には現代のSNSらしい闇の部分が多く描かれている一方で、単なる悲観や風刺には決してとどまらず、確かに伝えたいメッセージを込めております。

先述したプロジェクトページでの本作についての説明だが、このような思いで制作に至った背景は何だったのか。その点をアントラー氏に伺うと、「ネットの闇だけを描きたくなかった」と語っていただいた。ご自身もネット文化に深く浸っていたからこそ、ネットの何が楽しいのか、なぜ人はSNSに惹かれるのかまで丁寧に描くことで、ネット文化の"光"ともいえる明るい一面も描きたかったそうだ。

SNSを使う全員が悪人なはずもなく、結局はそれぞれの使い方次第なのではないか。そんなメッセージも込めつつ、本作はネットの功罪両面が描かれる。一番伝えたい部分はエンドロール部分に込めたと語っていただいたので、物語の結末まで見逃せない。

科学と社会、それぞれのテーマと推理

本作は「SNSの闇」という社会的なテーマを扱いつつ、科学テーマを用いてスケールを拡大し、世界の根幹を問い直す。観察し推理する行為そのものを突き詰めた結果、結末を見たあとでは世界の見え方さえ変わってくるほどで、長く心に残りやすい。

真相を知ったあとに振り返ってもシナリオとキャラの魅力が損なわれることはないだろう。むしろ、作り込まれた設定と伏線に唸ってしまう。

そして、本作は最後まで推理ゲームであることをやめない。全編を通してずっと積み重ねてきたロジックを用いて最終解答を導くところに、推理ものとしての美しさがある。しかも、SNSを題材にした既存の作品よりもSNSの仕組みを忠実に再現して推理ゲームとして成立させている。

テーマ、ゲームシステム、設定の細部の作り込みがこんなにうまく組み合わさった推理ゲームはなかなかお目にかかれないだろう。ぜひ結末の先にあるものを見届けてほしい。


基本情報 ミカクテイ事件の観測者-Demons'Timeline-
開発 DigitalCats
販売 DigitalCats
配信日 2026年4月30日
言語 日本語有り
価格 1,300円(Steam

ライター:Masa Kei・レイリー 編集:LayerQ

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