2026年10月3日~4日に、大阪府・コングレスクエア グラングリーン大阪にて「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT 2026(以下、OIGS2026)」が開催された。試遊した出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。
なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。

本稿でご紹介するのは、OIGS2026での出展が初公開となった、横スクロールのプラットフォームアクション・アドベンチャーゲーム『To 666 Deliver or Die』だ。プレイヤーは配達員として昭和時代に建造された不気味な団地へ赴き、スマホに届く指示に従い配達業務をこなしていく。開発をGe-saku代表の長井知佳氏が個人で手がけ、パブリッシャーは現在募集中とのことだ。
会場では試遊特典として、紙袋のほか、OIGS2026試遊版ビルドをダウンロードできるコードも配布されていた。実際にダウンロードして遊んでみたが、こちらは環境的に会場では拾いきれなかったBGMまではっきりと聴くことができ、より臨場感と緊張感あふれる体験を鮮明に味わうことができる。当日コードを受け取れた方は、ぜひご自宅で改めて本作の試遊を楽しんでみてほしい。
本稿では、会場で試遊してみた感想とともに、開発者にお答えいただいたインタビューの内容についてお伝えしていこう。

だんだんおかしくなっていく幽霊団地でのデリバリーバイト
本作のベースは、横スクロールのプラットフォーム・アクションだ。フードデリバリースタッフであるプレイヤーは、スマホに届く配達指示に従い、指定された部屋へ品物を届なければならない。古びた団地はどこか不気味な雰囲気で、通路をツタが塞いでいたり、ところどころ床が抜けていたりとぼろぼろだ。拾ったナタやジャンプを駆使して障害を乗り越えつつ、目的の部屋を目指して進んでいく。
ツタが燃えはじめ消火器が必要になったり、階段の前に物が置かれていて通れずに回り道をしたり……新たなステージに向かうのではなく、同じフィールド内で変化が起きて、新たなアプローチが必要になってくるというプレイフィールが新鮮だ。必要な場面でカメラが引いて、上階・下階の様子が見えるようになるなど、プレイヤーが自然と攻略法に気付けるような動線が丁寧に敷かれていることも感じ取れた。
スマホに届く指示の異様な雰囲気や、不意に姿を見せる謎の影など、“心臓にやさしい、直視できるホラー表現”がほどよく差し込まれていたことも好印象だ。不気味なものに怖がるのは楽しいが、一般的なホラー作品は怖すぎて見ることができないという人も少なくないだろう。誰でも楽しめるちょっとした不可解な怖さがアクセントとなり、終始プレイを楽しむことができた。
そんな「楽しめる怖さ」の最たるものが、試遊最後の階段を上り続けるシーン。序盤は105号室、202号室……と下の階から配達を進めていき、最後の配達でいよいよ666号室を目指すことになるのだが、なんと6階は存在せず5階の上は屋上となっていた。目の前にはどこまでも続く階段があり、スマホには「上りなさい」との指示が。従って階段を上がっていくと、暗闇のなかスタッフロールが流れだす……という演出で試遊版は幕を引く。
スタッフロールはプレイヤーの歩行に合わせて流れていくので、立ち止まると同じく停止するし、階段を下りれば逆戻りで引っ込んでいく。そのことに気付き、屋上まで戻ってみようかと階段を下り続けていくと……
思わず声をあげて、驚きながら喜んでしまった。プレイヤーの行動に対してゲームからピンポイントなリアクションがある、というのは、どんなジャンルでも非常に嬉しくなる演出だ。
不可解な現象が次々巻き起こる、異様な団地でのフードデリバリー。我々が届けているものは本当に“フード”なのか、姿の見えない客や会社は何者なのか? 製品版への期待が非常に高まる内容だった。
前作の経験を踏まえつつ、新たな挑戦へ――開発者インタビュー
会場にて、開発の長井氏よりお話を伺うことができた。本作は、コンセプトアートやシナリオの制作会社である株式会社キュートロンのインディーゲーム部門として、長井氏が個人で開発されているとのこと。
制作のきっかけとして、前作『H9:ORIGIN』(公式サイト/DLsite/DMM/worldmap store)での経験が大きく影響していると聞かせてくれた。『H9:ORIGIN』は、発売中止になった“美少女野球拳ゲーム”の闇に迫っていく、サイコホラー・テキストADVである。Steamでは多くのウィッシュリストを集めていたが、少年誌のお色気パート程度で作っていた「野球拳」がセンシティブであるとされ、なんとリジェクトされてしまったそう。
発売こそできたが、本数的には非常に悔しい思いをしたため、今回はお色気なしの方向に決まったとのことだった。
また、長井氏の本業はシナリオライターだが、ノベルゲームはシナリオを終えるとプレイ自体は寿命が終わってしまうと感じていたそう。そこで、何度でも繰り返し遊べるゲームが作りたいとの思いで、初めての2Dアクションゲームに挑戦したのだと教えてくれた。配達先の変化やランダムイベントなど、プレイしたユーザーの数だけ異なる体験ができる設計を想定しているとのことだ。
フィールドギミックのひとつである床が抜けている箇所なども、プレイのたび変化するのか尋ねてみたところ、「やりたいと思っている」と聞かせてくれたが――落とし穴などのフェイント系のギミックは、ゲームプレイとしてはある種の“理不尽さ”を持つため、どう調整するか考えているところだそう。
このように、ゲームデザインを構造的に捉えての試行錯誤は、ほかの要素にも強くあらわれている。
ただ部屋を行き来するだけでは面白くない。ツタを這わせて道を塞ぎ、ナタで切り開くのはどうか。それだけでもまだ面白くない。では、ツタが燃えはじめダメージが入るようになれば――消火器で消しながら進む体験へと、プレイ内容を変化させることができる。このように、何度も行き詰まりながら、“プレイヤーの進捗や習熟度に合わせてフィールド側が変化・対応していく”という方向にまとまっていったそう。
これであれば、たとえば従来のメトロイドヴァニアのように広大なマップを用意せずとも、アイデアと仕掛けで勝負できる。同じフィールド上で違う遊びを体験できる構造だ。この方向性に辿り着くまで、なんと3か月もの時間を要したという。今後はこのコンセプトをもとに、全体的なシナリオとゲーム体験の掛け合わせをはかるため、正式なアルファ版に向けた本開発に取り組んでいくとのこと。
そのシナリオはどのようなものを想定しているかというと、ノベルゲームのような線形なものではなく、“ユーザーが直面するイベントを並べていくと全体像が浮かびあがってきて、世界観を考察できる”というナラティブなものにする予定だと聞かせてくれた。
筆者がもっとも嬉しかった「振り返るな」のシーンについても、お話をうかがってみた。なんでも、ゲームプレイヤーはコントローラーから許されるすべてのパターンを試すはずと考えて、仕込んでおいてくれたのだそう。製品版でも、重箱の隅をつつくような「こんなこと誰もしないだろう」というポイントに、きっちり土産を用意しておく予定とのこと。隅々まで触りがいのあるゲーム体験が期待できそうだ。
ホラー表現の強度についても、やはり意図的に抑えているのだと聞かせてくれた。ホラー作品としては、一般的に怖いほど評価される一方で、それでは遊べないというユーザーもやはり存在する。そんな人にも“ホラーのさわり”を楽しんでもらえる塩梅を目指しているそうだ。
むしろ、直接的になにかを見せる怖さではなく、“ゲームは何もしていないのに、プレイヤーが想像で勝手に怖くなるような怖さ”を目指して作っているという。それによって、欠損や流血・肌色などが抑えられ、YouTube等で配信しやすくなるというメリットも意識されているそう。
日本的な舞台を、世界へ
本作で目指すことになる、666号室――その数字が欧米で「悪魔の数字」と呼ばれていることは、日本でも有名だ。一方、中国では、ポジティブな意味を持つネットスラングとして使われている側面があるそう。
また、昭和に建てられた団地というビジュアルは日本的でありつつも、集合住宅やアパートメントといったものは、海外でもじゅうぶん馴染みのある概念である。“フードデリバリー”の存在についても同様だ。日本的なかたちをしっかり残しながら、海外でも成立する作品となるよう意識されたのだとか。
望まぬかたちで国内のみの展開となってしまった前作。本作ではワールドワイドな展開を目指しており、多言語対応やマーケティングのため、現在パブリッシャーを募集しているとのことだ。
職人的なこだわりと試行錯誤で、何度でも遊べるナラティブな2Dアクションを目指す『To 666 Deliver or Die』。配信日は未定だが、ここから1年ほどで作る予定だそう。気になった方はぜひ、ウィッシュリストに追加してみてほしい。
| 基本情報 | To 666 Deliver or Die |
|---|---|
| 開発 | Ge-saku |
| 販売 | Ge-saku |
| 配信日 | 2027年予定 |
| 言語 | 日本語有り |
| 価格 | 未定(Steam) |
ライター:しわしわ 編集:レイリー