午前3時から10分間の奇妙な「散歩」。謎めいた夜の街を歩く超現実的な3Dアドベンチャー『A Passing in the Night』ブースレポート【TGS2026】

アドベンチャーイベント

2026年9月17日〜20日に、千葉県・幕張メッセにて開催された「東京ゲームショウ2026(以下、TGS2026)」の出展タイトルから、筆者が注目する魅力的なタイトルをピックアップして紹介しよう。なお、基本的には今後リリース予定の開発中のタイトルや、ローンチから間もないタイトル、早期アクセス中のタイトルを対象としている。

弊誌では、2025年3月のTOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025で『A Passing in the Night』を試遊し、その独特な世界観やアートスタイルを紹介した。あれから約1年半。今回はそのフォローアップとして、TGS2026での試遊レポートと、歩くこと自体を楽しませるゲームデザインについて伺った開発者インタビューをお届けしよう。

夢か?現実か? 超現実的な夜の街を歩く三人称3Dアドベンチャー『A Passing in the Night』ブースレポート【TIGS2025】
TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2025に出展されていた『A Passing in the Night』のブースレポートをお送りする。『A Passing in the Night』は、ひとりの青年が夢か現実か定かではない夜の街を歩く三人称3Dアドベンチャーゲームだ。
TOKYO GAME SHOW 2026|東京ゲームショウ2026
幕張メッセにて9/17(木)-21(月・祝)にて開催!30周年を迎えるTGSの今年のテーマは「史上最長、遊びづくしの5日間」。遊びの量も、熱量もスケールアップして、ゲームを遊びつくすSHOWがはじまります。

夜の街を歩こう。

『A Passing in the Night』は、青年・かいが、夢か現実か定かではない夜の街を歩きながら、さまざまな存在との出会いを通じて自身の苦しみと向き合う三人称視点3Dアドベンチャーゲームだ。開発は、.iris(ドットアイリス)が手掛ける。

ゲーム内の時間は、現実と同じ速度で進行する。製品版では午前3時から4時までの1時間を過ごし、プレイヤーの行動や選択によって異なる結末を迎えることになる。リゾグラフのような印刷技法に着想を得た独特のグラフィックも、本作の大きな特徴だ。どこか現実のようでありながら、異質さも感じさせる街並みには、.irisならではの美術的なこだわりが溢れている。

▲主人公・かいの背中
A Passing in the Night
深夜、かいは夢から目覚める。亡霊たちの間を彷徨いながら奇妙な街をあてもなく歩く。時間をやり過ごすため、現実から逃げるため。現実を生きる者にのみ時は流れる。

今回試遊したのは、製品版の冒頭にあたる午前3時からの10分間だ。何者かとの取引を描くシネマシーンから始まる。謎の存在は、目の前の火に如雨露のようなもので水らしきものをかけ続けながら、「お前の一番大切なキヲクをいただく代わりに、全ての痛みから永遠に解放してやろう」と囁く。なぜこの火は消えないのだろうと不思議に思いながらも、この謎の存在にいくつか質問した後、画面は主人公・かいに切り替わった。

▲謎の存在に取引を持ちかけられる

ここからは10分間のウォーキングタイム。かいを操作して歩いてゆく。不気味なモニュメントや謎の光、妙な人物を横目に進み、プレイヤーの好きなタイミングで立ち止まったり、座ったりすることもできる。

本作では、歩いている最中の見え方や感じ方を変える2つの機能が用意されている。それがぼーっとする機能と心象モードだ。一定時間歩き続けると「ぼーっとする」状態に入り、画角が少し広くなるほか、周囲の見え方やBGMが変化する。なお、この機能自体は設定でオフにすることも可能だ。

▲「ぼーっとする」状態では、画面の見え方にも変化が生まれる

一方、心象モードはプレイヤーが任意のタイミングで切り替えられる。このモードに入ると、通常時は見えない、赤い線状の模様やアニメーション、言葉などが現れる。筆者が心象モードに入った場面では、道路上に蝶々のようなマークが一定間隔で浮かんでいた。

▲心象モードに切り替えると、通常は見えないものが見えるようになる

何も考えずに、ぼーっと歩くのか、それとも何かに意識を向け、周囲をじっくりと観察するのか。プレイヤーは、この街をどう歩き、どう向き合うかを自由に選べるのだ。

前回の取材では、本作の独特なアートスタイルと、夢か現実か分からない世界観が強く印象に残った。今回はその魅力を残しつつ、「歩く」という行為そのものを楽しませる工夫が加わり、前回よりもゲームとしての体験が豊かになっていると感じた。

「走る」には目的がある。歩くことをゲームにするための試行錯誤

試遊後、本作を手掛けた.irisのヒロ氏とユニス氏にお話を伺った。2人は夫婦でゲームを開発しており、ヒロ氏がプログラミングとテクニカルアート、ユニス氏がビジュアルアートと音楽、シナリオを担当している。2人とも美術系の専攻出身で、学生時代からいつか一緒にゲームを制作したいと話していたという。本作は、そんな2人が手掛ける初めてのゲームだ。

はじめに、本作に「走る」操作がない理由を改めてたずねた。2人によると、走るという行為には「目的地へ早くたどり着きたい」など、何らかの目的が伴う。一方、本作で大切にしているのは、どこかへ急ぐことではなく、歩くことそのものだという。開発当初は、ゲームシステムとしても歩くだけのシンプルなものだった。そこから試行錯誤を重ねるなかで、歩行体験をより豊かにする仕組みとして、「ぼーっとする」機能や心象モードを取り入れていったという。

続いて、この2つの機能について詳しく伺った。ぼーっとする機能を使うと、画角が少し広くなり、周囲にはブルーム効果のような視覚的変化が生まれ、音楽も強調され、通常の歩行時とは異なる感覚を味わえる。プレイヤーの意識や見え方を変えることで、歩く行為そのものをよりダイナミックにしたかったという。

一方、もうひとつの心象モードは、ゲームシステム上の道案内のような役割に留まらない。心象モードで表示される言葉には、主人公が連想していることや感情を表すものを取り入れており、あえて抽象的な表現にしているという。プレイヤーの解釈に委ねる部分があり、プレイヤー一人一人の受け取り方に余白があるところに、本作らしさを感じた。

なお、2026年5月にはPLAYISMによるパブリッシングが発表された。これに伴い、英語と日本語のフルボイス対応に加え、日本語・英語・簡体字中国語・繁体字中国語・韓国語の5言語に対応することになったという。実際に今回の試遊でも、フルボイスが強く印象に残った。にぎやかなTGS会場でプレイしているにもかかわらず、キャラクターの声が聞こえた瞬間、周囲の喧騒から切り離されたように感じた。

歩くこと自体を楽しませるために、何を見せ、どのような変化を用意するのか。そうした歩行体験が丁寧に設計された『A Passing in the Night』は、2026年内にSteamで発売予定。気になった方は、ぜひSteamのウィッシュリストに登録しておこう。なお、お二人の開発vlogも公開されているので、併せてチェックしてほしい。

A Passing in the Night
深夜、かいは夢から目覚める。亡霊たちの間を彷徨いながら奇妙な街をあてもなく歩く。時間をやり過ごすため、現実から逃げるため。現実を生きる者にのみ時は流れる。

基本情報 A Passing in the Night
開発 .iris
販売 PLAYISM
配信日 2026年予定
言語 日本語有り
価格 未定(Steam)

ライター:ばんじーよこすか 編集:LayerQ

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