「僕にとってのアートになってしまう」――DREAMSCAPEプロデューサー中田隼斗氏が語る、審査をしない葛藤とゲームとの新たな出会い【DREAMSCAPE5】

イベント

2026年10月24日に、東京都・有楽町の東京国際フォーラム ホールE2にてWorldMap株式会社が主催するインディーゲーム展示会「DREAMSCAPE5 presented by マウスコンピューター」が開催された。

DREAMSCAPEは2024年に大阪でスタートし、第2回からはホラーやノベルなど、特定のテーマに絞った展示会を開催してきた。第5回となる今回は「アート」「パズル」「アクション」という3つのテーマを掲げ、会場規模を前回の約3倍に拡大。140作品以上が集結した。

DREAMSCAPE
インディーゲームの可能性を拡張する支援プロジェクト

会場に入ると、天井から吊り下げられた照明が目を引く。照明を落とした会場では各ブースのモニターが鮮やかに浮かび上がり、奥の大画面には出展作品の紹介映像が映し出されていた。

今回は、DREAMSCAPEのプロデューサー・中田隼斗氏にインタビューを実施した。3つのテーマを選んだ理由から、出展作品を審査しない方針への葛藤、クリエイターとプレイヤー双方に向けた会場づくりまで、その舞台裏を伺った。

「僕にとってのアートになってしまう」作品を審査しないという選択と葛藤

――今回「アート」「パズル」「アクション」という3テーマにした経緯を教えてください。

これまでホラーをテーマに2回、ノベルで1回開催してきて、結構ディープなイベントとして、このぐらいの規模なのかな、という天井が見えてきた感覚がありました。DREAMSCAPEをもう少し発展させていく未来を考えたときに、ホラーだけじゃなくてテーマの掛け合わせを検討していきました。

パズルとアクションという2つのテーマを選んだ理由としては、明確なものがあります。ダニエル・カーネマンという心理学者が書いた『ファスト&スロー』の「脳みそには2つのシステムがある」という理論から来ています。たとえば、ボールが顔に飛んできたら瞬発的に避ける、これがシステム1で、論理的にゆっくり考えて解を導き出すのがシステム2。それをゲームに置き換えたら、アクションとパズルなんじゃないか、それをこのDREAMSCAPEという空間で作れないかなと。来場者の方の脳全体をまんべんなく使ってほしいなという思いがありました。

――確かにパズルゲームを遊んだ後にアクションゲームを遊んでいると、頭の使い方が切り替わるような感覚がありました。そのふたつのテーマに、アートを加えたのはなぜですか?

正直、最初はノリの部分もありました(笑)。偶発的ではあったんですが、答えを持たない表現、ゲームを表現の手段やメッセージとして使う活動としてのアートが入ることで、揺らぎが生まれて面白い空間になっているんじゃないかなと思います。

だからこそ、今回はブースレイアウトもかなり試行錯誤しました。どのように配置したら、来場者の方々の体験が豊かになるのかなと考えました。あえて、3つのテーマのタイトルが混じり合うように並べています。

――ゲームのジャンル分けに悩む開発者の方もいらっしゃると思います。今回の3つのテーマについて、出展作品をどのように分類しているのでしょうか?

そうですね、今回は一応定義を決めていて、アクションというのは、瞬間的に身体の反応で応えるもの、瞬発力で対応しているものと捉えています。パズルはその逆で、思考を巡らせて回答を導き出すもの。だから、一般的にはアクションゲームに分類される作品でも、パズルの定義に適合していればパズルとして扱っているのが、特徴的かなと思います。

実は、「自分の作品をアートとして出していいですか?」と何度か聞かれました。でも、僕は「これはアートのテーマに合わないです」と言うつもりは全くないんです。むしろ、自分の作品のこういう点がアートの入口に適していると思って入っていただけることがうれしいです。「審査しないのですか」とよく言われるんですが、僕が振り分けてしまうと、それは僕にとってのアートになってしまう。それがずっと気持ち悪いんです。

▲アート作品を出展するブースには、装飾に凝ったものも見られた

――出展タイトルを審査しないことに、不安や葛藤はなかったんですか?

すごくありました。アートというカテゴリの定義を大事にされている方も多い中で、運営側が審査をしないということは、キュレーションの責任をあえてとらず、入口を設けて、クリエイターにその扉を開けさせる責任を押しつけているとも言えます。アートの業界にいると(筆者注:中田氏はグラフィックデザイナーでもある)、キュレーションありきというか、それがアートギャラリーやディレクターの責任にもなってきます。それを知っているがゆえに、無責任に入口を設けていいんだっけ、とものすごく葛藤しました。

――その葛藤にどう向き合われたんですか?

審査という形で責任を取るんじゃなくて、クリエイターの方がご自身で自分の作品と向き合う機会を作ろうと思ったんです。応募前に確認してもらうステートメントはいつもより真面目に書いています。テーマに対する考え方や、なぜアートなのか、という話を。自分の作品ってどうなんだっけ、と考えていただきたくて。

――それは、結構……不安というか勇気がいるといいますか。

正直、今回のアートに関しては、失敗してもいいと思っていました。ホラーはすごく好きで、ホラーオンリーの展示会もずっとやりたいんですけど、これまで2回やってきて、3回目を同じようにやるのは違うと思ったんです。次は多少集客が減ってもチャレンジしたいと思いました。それで、実際にはアートの枠が最初に埋まりました。これは想定外でしたね。

▲写真手前にはアートのゲームが並ぶ。奥にはDREAMSCAPE名物の大きなモニターも

「出展して良かった」と思える体験を――細部までこだわるDREAMSCAPEのデザイン

――DREAMSCAPEは会場の装飾や配布物など、細部までデザインにこだわっている印象があります。今回はスタッフ・出展者・メディア・スポンサー向けのパスが紙ではなくアクリル製だったのも驚きました。どのような意図でデザインされたのでしょうか?

新しくチームに入ったデザイナー古池安由実さんと一緒にデザインしました。今回は、アクリルの両面に青のグラデーションをかけて、その上から白の印字を入れています。アクリルも普通のものではなくスモークがかかったものを採用しました。厚くなると野暮ったくなるので、薄めのもので。これだけで、ウン十万円かかっています(笑)。

来場者の方々はもちろんですが、クリエイターの方々にも特別な体験をしてほしいなって思っています。僕たちからしたら、両方ともお客様なので。クリエイターの方々に「出展して良かった」って思ってほしいんですよね。

▲グラデーションとパキッとした白い印字が美しい

パンフレットとゲームブックにもこだわっていて、ゲームブックのほうは、全体的に茶色いんですが、一部の白い部分があるので、茶色い紙ではなく白い紙を茶色く印刷しています。ゲームブックは、古池さんの企画なんですが、挿絵が全部切り絵なんですよ。良い意味でDREAMSCAPEの雰囲気と少し違うのがいいなと思っています。イベントが終わった後も、たまには手にとって思い出していただけたらうれしいですね。

クリエイターがいなくても、ゲームとの出会いを生む「代理出展」

――DREAMSCAPEといえば、クリエイティブはもちろんですが、出展者が当日会場に来なくてもゲームの出展ができる「代理出展」という仕組みも特徴的だと思います。改めて、始めた経緯を教えていただけますか?

イベントをやる上で最初にぶち当たるのが、出展者が集まらない問題なんです。遠方でもいいから出展してほしい、というところから正直始まりました。こちらでパソコンにビルドを入れて展示する形にしたら、東京のイベントに普段来られない方が参加できるようになって、すごく良かったんです。前回のホラーゲーム限定の会では、来場者の方々から「こんなホラーゲームあったんだ!」といった声もたくさんいただきました。

――代理出展は、以前は1台のパソコンにつき1タイトルを遊べる形式でしたが、前回から1台で複数のタイトルを遊べるようになりました。今回はエリアも広くなっていましたが、どのような変化があったのでしょうか?

前回あたりで気づいたのですが、ゲームイベントでクリエイターが目の前にいると緊張してしまう来場者の方って結構いらっしゃるんですよ。「自分と合わなかったらどうしよう」「自分はゲームが下手だから」「コミュニケーションは苦手だから」といった理由でイベントに来づらい方が。前回、代理出展のタイトルをまとめてコーナーを作ったら、最初から最後までずっと来場者の方々で埋まりました。クリエイターと来場者さんの両方にとってとても良かったんですよ。

――前回大盛況でしたよね。私も列に並びました。とはいえ、これだけのパソコンを用意してセットアップするというのも、かなり大変ですよね?

本当に大変です。うちは、ものすごく少ない人数、一番忙しい時期でも4人とかで回してるので。今回はマウスコンピューターさんがパソコンを、I-O DATAさんがモニター「GigaCrysta」を提供してくださって、だいぶ支えられました。

――しかも専用のアプリもありますよね。遊び方は、QRコードからチェックできるようになっていますし、とってもプレイヤーフレンドリーに設計されているという印象です。

自分たちが管理しやすくなるように、そして来場者の方々も遊びやすくなるようにしたかったんです。そういう裏の部分がもしかしたらDREAMSCAPEの特徴の1つかもしれないですね、少人数でシステマティックにやっているので。

▲代理出展のコーナー

音楽からゲームに出会う――「Sound Art Space」が作る新たな入口

――今回は、出展作品の音楽をヘッドホンで楽しめる「Sound Art Space」が新たに設けられました。専用アプリでは、ゲームのキービジュアルから楽曲を選べるほか、気になった作品のブースの位置も地図で確認できるようになっていました。この企画はどのように生まれたのでしょうか?

DREAMSCAPEは音楽の領域と接点を持ちたい気持ちが、僕の中でずっとあったんです。一緒に企画したゲームクリエイター・びぶさんは#3からスポンサードしてくれているのですが、今回は「音楽からゲームに出会う体験を提案したい」と声をかけていただき、イベント専用の再生アプリを制作しました。

曲からゲームを好きになる体験って、ゲーム好きの方ならあるんじゃないかなと思っています。ゲーム自体を遊んだことはないんだけど、この曲好きなんだよねとか、あるフレーズを聴いたら、そのゲームのシーンを思い出したりとか。プレイし終わった後に一番残る要素は、音楽でもあると思っていて。いろいろな角度から人がゲームに入ってきてほしいんです。そのためにも、誰もやってない面白いことをやっていきたいですね。

▲Sound Art Space
▲右上の「このゲームを遊びに行く」をクリックするとブースまでの地図が表示される

出展作品を審査しないという選択、遠方のクリエイターも参加できる代理出展、そして音楽からゲームと出会える新たな試み。これらに共通するのは、ゲームとの出会いの入口を広げようとする姿勢だ。その先にある体験を豊かにするため、DREAMSCAPEは会場の空間づくりや配布物のデザインにもこだわっている。今回のインタビューを通して、クリエイターとプレイヤーの双方を大切にする中田氏のイベントづくりへの思いが伝わってきた。

次回のDREAMSCAPEは、2027年1月に群馬県で「DREAMSCAPE MINI at Shin-Maebashi」として開催予定。詳細は近日発表予定とのことなので、公式Xで続報をチェックしてほしい。

基本情報 DREAMSCAPE5
公式サイト DREAMSCAPE
X DREAMSCAPE【公式】

ライター:ばんじーよこすか 編集:LayerQ

あわせて読みたい